行政書士 高杉将寿
十回目の最後の書籍は、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』です。書籍の冒頭で、2002年日韓共催ワールドカップのチケットに関する話が述べられています。高騰したチケットを手に入れるために、定価の何十倍にもあたる何十万円も支払った人と、同じチケットを定価で手に入れることができた人のエピソードが述べられています。定価でエピソードを手に入れた人は、違法行為を行った訳ではありません。制度の歪みを利用しながら、合法的に入手しています。
「どのような制度であってもひずみや歪みが存在する。このひずみや歪みをみつけ、黄金の羽根を手に入れることが幸運をもたらす」と著者は主張します。この本が発刊され約20年以上が経過しますが、私は著者の主張が全く色あせたと思いません。むしろこのコロナ禍において、著者の主張は正しいものであったと、その確信をますます強めています。
コロナ禍において、行政は様々な支援策を打ち出しました。自分で支援策を見つけることの出来た人、支援策の見つけ方を知っている人とつながれた人は、コロナ禍を生き残るための支援を受けることが出来ました。しかしそうで無い人は、残念ながらコロナ禍において支援を受けることができませんでした。場合によってはその差は、お一人あたり数千万円に及ぶのではないかと思います。
この様な情報はインターネットが存在しない時代には、政治家や官僚やマスコミなどのある種の特権階級しか知り得ないものでした。しかしインターネットが存在する現在においては、情報そのものは皆に等しく公開されているのです。違いは、その情報を上手く見つけ、活用できる能力が備わっているかどうかだけです。
これから起業される皆さんは、ご自身でご自分の身を守らねばなりません。この様な制度について、会社に勤めていれば会社が教えてくれるかもしれません。しかし起業されますと、ご自身で見つけなくてはいけません。誰かが積極的に教えてくれる訳ではないのです。誰かに束縛されない人生を生きるということは、同時に誰かからの保護を無くすことを意味します。本書はその厳しさの中で今後どのように生き残っていけばよいか、一つの指針になってくれるように思います。
著者:橘 玲
出版社 : 幻冬舎; 新版 (2017/8/4)
発売日 : 2017/8/4
言語 : 日本語
文庫 : 418ページ
ISBN-10 : 4344426398
ISBN-13 : 978-4344426399